お庭のことや日々のこと

始めたきっかけ。

お庭の相談ができる園芸店として、週に1日だけ開店しているGARDEN’S BASE。

今回はGARDEN’S BASEを始めたきっかけのお話。

21歳で職人の世界に飛び込み、今日まで働いてきましたが、当初は職人と言えば無口で愛想がなく、ただひたすらに仕事をこなして技を磨き続けるイメージ像がありました。(今思えばただの偏見ですね)

しかし働いていく中で、植木職人は思っていた職人のイメージと違い、お客様と現場で雑談を交わしながらお庭の悩みや疑問点などをヒアリングして、それを元に作業をしてから来年の剪定の営業もするなど、植木職人は何役もこなしていることに驚きました。

これはお客様と植木職人との距離が近いから出来ることだと思います。

しかしその一方でよく聞いたのが、職人さんは怖いイメージがあり話しづらい、相談しにくいなどのマイナスイメージでした。

また元請けなどの業者さんからは、職人は自身で仕事が取れないと思われて下に見られるのかわかりませんが、過去には駒使いのような扱いを受けたこともありました。

そうした今までの経験から、私は自身で営業からご提案、施工まで全てを出来る職人を理想としています。

私はどの職種でも、現場で作業する職人さんが1番すごいと思っています。

どんなにいいアイディアやデザインでも、形にならなければ何の意味もありません。

最終的にそのアイディアやデザインを形にするのが、技術や経験を元に行動している職人さんだからです。

自身で発言したことに対して、責任を持って最後までやり遂げカタチにする。

そのような理想の職人になる為に、お庭の相談が出来る園芸店を始めました。

植木職人として培ってきた知識と経験を元に、お客様と職人との距離が近づき、相談しやすく頼っていただけるように、少しでもお庭と職人の魅力を伝えられるようにと。

そんな思いでお店番をしていますので、ご来店時にはお気軽にご相談下さい。

茶庭の剪定。

先日は大宮区にて茶庭の剪定作業でした。

3〜4人工の和庭の剪定は1人で作業するのが好きな私。

樹木1本1本を、その空間に合うようにバランスよく整える。

茶庭独特の落ち着いた雰囲気の中で、樹木が透けていく様を見ていると心が洗われます。

剪定が完了して景色が露わになった時が、この仕事をやっていて良かったなと思う瞬間です。

夏の植木屋の話。

植木屋は植物を扱う仕事。

だから人間の都合ではなく、植物に合わせて仕事をしなければいけません。

植物にとって最も過酷な時期が夏。

特に近年の夏は異常な猛暑。

その為、今まで植木屋が培ってきた植物に対する常識や経験が通用しなくなってきています。

植木屋の繁忙期は主にお盆前とお正月前。

親戚や知人の来客が多くなる前にお庭を綺麗にしたい人が多い為、この時期に剪定の依頼が集中します。

うちの場合は、お庭の年間管理や夏に剪定をご依頼頂いた場合、樹木の形を整えて少しだけ風通しを良くする程度の軽剪定にしています。

これは夏の日差しで枝や幹がダメージを負わないようにするため。

落葉樹など葉の薄い樹木は特に注意が必要。

すぐ葉焼けを起こしてしまう為、夏の剪定は避けることが無難です。

植栽に関しても、作業は梅雨前までにしています。

通常、植栽してから植物が自身で水が吸えるようになるまで約1カ月程度。

その前に夏が来てしまうと、自分で水が吸えずに暑さで枯れてしまうのが明白だからです。

昔は9月頃から植栽を再開出来ましたが、近年は10月末頃まで暑い日が続く為、頭を悩ませています。

もう少しで植物も私たちもつらいつらい酷暑の日々がやってきます。

今年も無事に乗り切ることができるのかと不安に思う今日この頃。

POP UP。

6月16日から30日まで、新宿区下落合にあるCaD様にてポップアップイベントを開催させて頂くことになりました。

こちらのshopは、オーナーである須藤剛建築設計事務所様の関わりのある方々と、縁という形でお店を形成した集いの場にしたいという素敵なコンセプトがあり、その集いに参加させて頂きとても光栄です。

私自身もポップアップをするのは初めてなので、どんな感じになるのかとても楽しみ。

お近くにお越しの際はぜひご来店ください!

・CaD POP UP

 6月16日〜30日

 CaD (カド)

 新宿区下落合3-20-15(目白駅徒歩6分)

 Open hour: 11:30-19:00

 定休日:月曜日

醍醐味。

先日は昨年に作庭させて頂いたお庭のメンテナンスへ。

植栽した時はまだ苗木で、どこか弱々しさもありましたが、たった1年で見違えるほど成長していました。

ただ縦横無尽に枝が伸びていた為、素直に成長出来るようにと枝を剪定。これがとても大事なこと。

将来的にどのような形になるか想像しながら剪定することで、3年後、5年後の景色は全く違ったものになります。

ただ単に伸びたところを切るのではなく、どう伸びていったらかっこよくなるかを考え、枝を剪定していく。

近年では剪定は軽視されがちですが、かっこいいお庭を作っていくのに大事なことは剪定技術と時間です。

すぐに結果が出ないから、難しくもあり面白い。

樹木の成長、お庭の成長を施主様と共に楽しむことができる。

それがこの仕事の醍醐味です。

お庭の管理方法論。

本日は神奈川県小田原市にて、お庭の樹木の剪定管理。

他県の弊社に毎年ご依頼頂き、とてもありがたい限りです。

こちらのお宅は、お庭の管理を任せていただいてから今年で7年目。

当初は樹木達の芽数も少なく、元気がない状態でした。

その為まずは3年程を目安に、樹木を元気にするお手入れをしていきました。

樹木毎に適切な時期に剪定をして、鋏を入れる回数を増やして新芽が吹きやすいように管理。

その甲斐もあり、現在では樹木達の芽数も増えてとても元気です。

樹木にはそれぞれ適切な剪定時期があり、その時期に剪定することで樹木へのダメージが少なく、元気に成長してくれます。

また樹木の消毒も毛虫が発生する時期に合わせて消毒することが大切です。

植木の管理は、年に1回お伺いして樹木をまとめて剪定する事がポピュラーですが、弊社では樹木毎の最適な剪定管理が出来る年間管理をおすすめしています。

キャラボクの話。

先日は吉見町にて樹木の剪定管理。

その中の1つにキャラボクという樹木があり、上部が枯れて形が崩れているので何とかして欲しいとご依頼頂き、剪定しながら昔話を思い出したので今回はその話。

キャラボクは主に玉散らしと呼ばれる仕立て方や、低木として半円に刈り込まれている形が主。

でも実は非常に弱く、割と剪定の難しい樹木の一種。強く刈り込み過ぎたり、剪定する時期を間違えると枯れる原因になったりします。

時期としては5月頃に、丁度いい箇所で剪定してあげればとても綺麗な新芽を吹かせ、鮮やかな黄緑から深緑へと葉を固めていきます。

昔親方から聞いたのですが、キャラボクにはキャラ師と呼ばれる専門の職人さんがいたそうです。

普段はキャラボクの生産や仕立てをしていて、時期が来ると各地域のお庭のキャラボクだけを剪定しに来るのだそう。

丁寧に枯れ枝を取り除き、枯れないギリギリの箇所で剪定して仕上げて帰っていく。

その話を聞いた時は専門職中の専門職だなと感服して、キャラボクの剪定をするのが怖くなったものです。

そんな懐かしい昔話を思い出しながらキャラボクの剪定をした、とある1日でした。

良いお庭とは論。

最近では様々なスタイルのお庭を目にすることが多くなりました。

南国をイメージしたドライガーデンや、オージープランツなどをふんだんに植栽した男前なお庭など、姿形は様々。

昭和時代のお庭といえば、松やマキなどが門かぶりとして綺麗に仕立てられている様な和庭が主流。また平成になるとヒメシャラやヤマボウシなどの雑木を中心としたお庭が流行でした。

近年では建物のデザイン性の向上と共に、お庭のスタイルも多様化してきたように思います。

職人として、昭和・平成・令和の様々なスタイルのお庭を見てきましたが、良いと思うお庭に共通していることがあります。

それは時代が変化しても色褪せないかっこよさがあるということ。

時代やスタイルが違えど、ちゃんとお手入れをして手間と時間を積み重ねたお庭はとてもかっこいいんです。

だからこそ最初のお庭づくりがとても大事。

10年後や50年後、どのように成長していくのか、時間という重みがどのようにプラスされるかを考えてお庭をつくる。

どんなスタイルのお庭でも、10年後や50年後もかっこいいと思えるお庭こそが、良いお庭だと思います。

初心の話。

以前の投稿に書きましたが、作業の際いつも自分に言い聞かせている言葉、

初心を忘れず、一からコツコツ、一つ一つ丁寧に。

今回はその初心になった出来事のお話。

私がこの世界に入った理由は、特に植物が好きだったわけでもなく、なんとなく面白そうだったから。

私が最初に入った会社は、昔ながらの日本庭園がある豪邸の樹木の剪定管理や、公共の樹木の管理業務がメインの仕事。

日本庭園はテレビで見た事があったくらいで、まして造園業という職種がある事すら知らなかった私にとって、毎日が本当に衝撃の連続でした。

10m以上の高い樹木に登ったり、刈り込み鋏で植木を綺麗に円筒形や半円にしたり、初めて見た時はとても人間業とは思えませんでした。

若い頃はそんな職人さん達に憧れ、自分も上手くなりたいと思い日々頑張っていました。

それから5〜6年が経ち、剪定がある程度出来るようになってこの仕事にも慣れた頃、友達から家を買ったのでお庭をつくって欲しいと頼まれました。

仕事でたまにちょっとしたお庭づくりや修繕工事をした経験もあったので快諾して、その時に自分が出来る事を提案してお庭をつくりました。

完成後とても喜んでもっらって感謝もしてもらえたのですが、自分的には喜んでもらえて嬉しかった反面とても申し訳ない気持ちになりました。

これくらいの事しか出来なくてごめんという悔しい気持ちが先に来てしまったんです。

その時からお庭づくりが上手くなりたい、自分のつくったお庭で喜んでもらいたいと強く思うようになりました。

それから10年以上経ちましたが、いつの間にか365日お庭の事を考えるくらいこの仕事が好きになっていました。

この仕事を始めたばかりの頃の、剪定が上手くなりたいと思った気持ちや、最初にお庭を作った時の喜びや悔しかった気持ち。

そして何より、自分の仕事で喜んでもらえたときの嬉しかった気持ち。

それが私の大事にしている初心です。

屋号の由来。

うちの屋号である庭屋はじめ。

そのため名前がはじめだと思われることがたまにありますが、

(過去には庭屋はじめが本名だと思われていた事も)

私の名前は一也で、漢字の一からはじめという意味も込めてはいますが、

もっと大事な意味を込めてこの屋号にしました。

お庭は、作庭してから年月をかけて成長していくもの。

言わば造ってからがはじまりです。

そのはじまりに携われるようにと思いを込めて、庭屋はじめと名付けました。

初心を忘れず、一からコツコツ、一つ一つ丁寧に。

思いや行動の全てにおいて、はじめという言葉を心掛けてこの仕事と向き合っています。